Claude という贈り物を受け取る — Bedrock + Claude Code セットアップガイド
こんな人向け
- Claude の無料プランを使い切って、もっと深く使いたいと思っている
- AWSが提供する無料クレジットを、正しく受け取りたいと思っている
- API経由で使いたいが、どこから始めればよいかわからない
- AWSアカウントを持っていないが、Bedrockという選択肢が気になっている
claude.ai の構造的な限界
claude.ai には、料金以外にも構造上の制約があります。
- 複数アカウントを作れない — 携帯番号による電話認証が必須で、1番号につき1アカウントに制限されます
- 外部への書き込みができない — ネットワーク制限により、外部APIやURLへのリクエスト送信ができません
- 記憶がセッションを跨がない — 会話履歴はセッション単位でリセットされ、無料プランの範囲では状態を持続できません
また、AWS Bedrockは新規アカウントに対して無料クレジットを付与している場合があります(条件・金額は時期により変わるため、AWS公式で確認してください)。
Claude Code with Bedrock はこれをすべて乗り越えられる唯一の構造です。 自分のAWSアカウントで動かすため、電話番号制限も外部通信制限もなく、メモリファイルをローカルに持つことでセッションを跨いだ記憶の復元も可能になります。
このガイドはそういった方に向けて、AWSとAnthropicが贈ってくれるリソースを正しく受け取り、Claude Codeを自分のインフラで動かすセットアップを解説します。
導入に向けた考え方
「個人の趣味」ではなく「部署単位の意思決定」として捉える
大企業では部署ごとにAWSアカウントを作るのが標準的な運用です。コスト管理・権限分離・セキュリティ境界を部署単位で引くためです。
一人で社会・世界に貢献するスケールで動く時代においても、論理は同じです。プロジェクトが変われば、AWSアカウントを新たに作る。事業ドメインが変われば、アカウントを分ける。これは「個人が複数のAWSアカウントを持つ」のではなく、「複数の事業・プロジェクトが、それぞれのインフラを持つ」という構造です。
Gmail + アドレスがその構造を可能にする
yourname+project01@gmail.com yourname+project02@gmail.com
1つのGmailで、任意の数のAWSアカウントを管理できます。メールはすべて同じ受信トレイに届くので、ラベルで仕分けるだけで大丈夫です。
心理的な壁の乗り越え方
「AWSアカウントを作るのは大げさ」という感覚は、スケールを「個人の趣味」に設定しているから生まれます。
「自治会のインフラを作る」「地域の記録を100年残す」「市民社会を変える」というスケールで動くなら、AWSアカウントの1つや2つは当然の単位です。
povo eSIM と Wise は、その構造を最小コストで実現するための道具です。月額固定費ゼロ、従量課金のみ。使わなければ費用は発生しません。
無料クレジットと後ろめたさについて
AWSの無料プランや無料クレジットは、「商業化が成立するかを検証する」ために存在します。ユーザーが検証し、価値を確信した段階で有料に移行する——それがAWSの設計意図です。
クレジットが枯渇したとき、それは失敗ではありません。「このプロジェクトでAWS商業化を目指した結果、教訓を得た」という完了です。後ろめたさや罪悪感は不要です。大企業のエンジニアがPoC環境を作っては壊すのと、構造的に同じことをしています。
無料クレジットを使うこと = AWSへの貢献
AWSが無料クレジットを提供するのは、Bedrockのモデル導入実績を増やしたいからです。実際に使われることで、AWSはAnthropicモデルの採用数・利用パターン・UX上の課題を把握できます。
- AWSのモデル導入実績に貢献している
- 実際の利用データをAWS・Anthropicに提供している
- UX改善のサイクルを動かしている
一方的に恩恵を受けているのではなく、双方向の関係の中にいます。
Day One という文化
Amazonは「Day One」というカルチャーを核に置いています。Jeff Bezosが提唱したこの概念は、「常に創業初日の精神で動け」という意味です。
Day Oneの対義語は「Day Two」——停滞、官僚化、意思決定の遅さ、そして死。新しいプロジェクトでAWSアカウントを作り直し、ゼロから検証を始めるこの行為は、Day Oneの実践そのものです。AWSはDay Oneを体現するために作られたインフラです。そのAWSを、Day Oneの精神で使う——これ以上に整合した使い方はありません。
準備物
| 用途 | 手段 |
|---|---|
| 電話番号(SMS認証) | povo eSIM |
| 支払いカード | Wise バーチャルデビットカード(無料・即発行) |
| メールアドレス | Gmail + アドレス(例: yourname+aws01@gmail.com) |
Gmail は + で申請ごとに使い分けます。AWSアカウントを複数作る場合も同一Gmailで管理できます。
povo とは
KDDIが提供する日本のMVNO(格安SIM)サービスです。最大の特徴は基本料金0円。
特徴
- eSIM対応 — 物理SIM不要。アプリで即日発行できます
- 基本料金0円 — データトッピングなしで維持費ゼロ
- SMS受信は無料 — AWSのSMS認証に使えます
- データは都度購入 — 1GB/7日 ¥390〜。使わなければ費用なし
導入の流れ
- App Store / Google Play で「povo」アプリをインストール
- メールアドレスで登録
- 本人確認(マイナンバーカードまたは運転免許証)
- eSIMを発行 → 端末に設定
- 完了。SMS受信はこの時点で可能(データトッピング不要)
AWSでの使い方
AWSアカウント作成時のSMS認証に使います。受信するだけなので通話・データ契約は不要です。複数のAWSアカウントを作る場合も同一のpovo番号でSMS認証できます。
Wise とは
イギリス発の国際送金・多通貨決済サービスです。個人口座は無料で開設できます。
特徴
- バーチャルデビットカード — 無料・即発行・即利用。国際クレジットカードと同等に使えます
- 実勢為替レート — 銀行より手数料が安い
- 口座維持費ゼロ — 残高を保持するだけなら費用なし
- 多通貨対応 — 円・ドル・ユーロ等を一つの口座で管理
導入の流れ
- wise.com でアカウント作成
- 本人確認(パスポートまたは運転免許証)
- 円を入金(銀行振込)
- バーチャルデビットカードを発行(無料・即発行・即利用可)
- カード番号をAWSの支払い方法として登録
クレジットカードではなくデビットカードを使う意義
クレジットカードは「まだ持っていないお金」を使う仕組みです。将来の収入を前借りし、返済義務を負う。対してデビットカードは「今すでに持っているお金」しか使えません。
ゼロ円主義の文脈でこれは重要です。無料クレジットで動かし、使い切ったら次を考える——このサイクルは、手元にあるものを使い切るというデビットの思想と一致しています。将来の返済を前提とした拡張ではなく、今受け取ったものを今使う。
もうひとつ、見落とされがちな論点があります。主権の帰属です。
クレジットカードは信用機関の承認経済に乗っています。審査基準は変わりうる。意図や活動内容によって、ある日突然使えなくなることがある。カードを「持っている」ように見えて、使えるかどうかの決定権は自分にありません。
デビットカードは違います。残高がある限り、誰の承認も必要としない。Wiseのような国際デビットであれば、特定の国・銀行・信用機関の基準に縛られにくい。自分のお金を、自分の判断で使う。その主権が手元にある。
実用上の利点もあります。信用審査が不要、すぐ発行できる、上限は入金額そのものなので使いすぎない。プロジェクト単位でアカウントを切り替えるこのセットアップと、デビットの「プロジェクトの財布」感覚はよく合います。
無料でできること
- 口座開設・維持:無料
- バーチャルデビットカード:無料・即発行・即利用
- 送受金:受け取りは無料、送金は少額手数料
- カードでの決済:為替手数料のみ(銀行比で大幅に安い)
Gmail とは
Googleが提供する無料のメールサービスです。AWSアカウント管理に使う上で重要な機能が「+アドレス」です。
+アドレスの仕組み
yourname@gmail.com を持っていれば、yourname+anything@gmail.com はすべて同じ受信トレイに届きます。
yourname+aws01@gmail.com ← AWSアカウント1つ目
yourname+aws02@gmail.com ← AWSアカウント2つ目
yourname+aws-lp@gmail.com ← LPプロジェクト用
AWSは + 以降を含めてメールアドレスとして認識するため、1つのGmailで事実上無制限にAWSアカウントを作れます。
AWSでの使い方
- AWSアカウント作成時のメールアドレスに
yourname+プロジェクト名@gmail.comを使います - 命名規則を決めておくと管理しやすいです(例:
+aws-01,+aws-lp) - 受信したAWSのメールはGmailのフィルタで自動ラベル分けできます
1. AWSアカウント作成
- https://aws.amazon.com → 「AWSアカウントを作成」
- メール:
yourname+aws01@gmail.com - 電話番号: povo eSIM でSMS認証
- カード: Wise バーチャルデビットカード($1の仮請求が来ます)
- サポートプラン: 無料(Basic)
2. Claudeモデルのアクセス申請
- AWSコンソール → Amazon Bedrock → 「モデルアクセス」
- リージョン:
ap-northeast-1(東京)を選択 - Anthropic の各モデルの最新バージョンにチェックを入れて申請(Opus / Sonnet / Haiku の最新が並んでいます)
- ユースケースを入力して送信 → 数分〜数時間で承認されます
3. IAMユーザー作成
- AWSコンソール → IAM → 「ユーザー」→「ユーザーを作成」
- ユーザー名:
claude-code(任意) - 権限ポリシーを直接アタッチ:
AmazonBedrockFullAccess - 作成完了
4. アクセスキー発行
- IAM → 作成したユーザー → 「セキュリティ認証情報」タブ
- 「アクセスキーを作成」→ ユースケース: 「コマンドラインインターフェイス(CLI)」
- Access Key ID と Secret Access Key を必ずメモしてください(一度しか表示されません)
はじめてのターミナル
ここからはターミナル(黒い画面)を使います。はじめての方向けに基本を説明します。
GUIとCUIの違い
普段使っているパソコンの操作は、アイコンをクリックしたりウィンドウを動かしたりするGUI(グラフィカルユーザーインターフェース)です。ターミナルはCUI(キャラクターユーザーインターフェース)と呼ばれる、文字だけで操作する仕組みです。
| GUI | CUI(ターミナル) | |
|---|---|---|
| 操作方法 | マウスでクリック | キーボードでコマンドを入力 |
| 見た目 | アイコン・ウィンドウ | 文字だけの画面 |
| 得意なこと | 直感的な操作 | 複雑な処理を正確・高速に実行 |
| 再現性 | 手順を言葉で説明しにくい | コマンドをそのまま共有できる |
このガイドのコマンドは「コピーして貼り付けてEnter」するだけで動きます。文字を打つことへの慣れは、あとから自然についてきます。
ターミナルの開き方
Mac: Command + Space でSpotlightを開き、「ターミナル」と入力してEnter
Windows: スタートメニューで「PowerShell」と検索 → 「Windows PowerShell」を開く
Linux: Ctrl + Alt + T(ディストリビューションによって異なります)
コマンドの読み方
#で始まる行はコメント(説明文)です。実行しても何も起きません- 行頭の
$はプロンプト記号です。入力する必要はありません - コマンドを貼り付けたら
Enterキーで実行します - 途中で止まって何も表示されないときは
qキーを押すと抜けられます
赤い文字やエラーメッセージが出ても慌てなくて大丈夫です。メッセージをそのままコピーして検索すると、ほとんどの場合は解決策が見つかります。
5. aws configure
# AWS CLIが未導入の場合
brew install awscli # Mac
sudo apt install awscli # Linux
winget install Amazon.AWSCLI # Windows
# 設定
aws configure
# AWS Access Key ID: <発行したキー>
# AWS Secret Access Key: <発行したシークレット>
# Default region name: ap-northeast-1 ← 東京リージョン
# Default output format: json
動作確認(Mac / Linux):
aws bedrock list-foundation-models --region ap-northeast-1 | grep claude
動作確認(Windows PowerShell):
aws bedrock list-foundation-models --region ap-northeast-1 | Select-String claude
6. Claude Code のインストール
# Mac / Linux / WSL(公式推奨)
curl -fsSL https://claude.ai/install.sh | bash
npm版は非推奨です。上記のネイティブインストーラーを使ってください。Apple署名済みバイナリが直接インストールされ、npmのサプライチェーンリスクを回避できます。
既にnpm版を使っている場合は移行できます:
curl -fsSL https://claude.ai/install.sh | bash
npm uninstall -g @anthropic-ai/claude-code
インストール確認:
which claude
claude --version
7. Claude Code 動作確認
# 申請済みモデルのIDを確認
aws bedrock list-foundation-models --region ap-northeast-1 \
--query 'modelSummaries[?contains(modelId,`anthropic.claude`)].modelId' \
--output table
Mac / Linux:
echo 'export CLAUDE_CODE_USE_BEDROCK=1' >> ~/.zprofile
echo 'export AWS_REGION=ap-northeast-1' >> ~/.zprofile
echo "export ANTHROPIC_MODEL='jp.anthropic.claude-sonnet-4-6'" >> ~/.zprofile
source ~/.zprofile
Windows(PowerShell):
[System.Environment]::SetEnvironmentVariable("CLAUDE_CODE_USE_BEDROCK","1","User")
[System.Environment]::SetEnvironmentVariable("AWS_REGION","ap-northeast-1","User")
[System.Environment]::SetEnvironmentVariable("ANTHROPIC_MODEL","jp.anthropic.claude-sonnet-4-6","User")
PowerShellを再起動してから起動確認:
claude
東京リージョンのモデルIDは
jp.anthropic.claude-*のプレフィックス形式(cross-region inference)です。バージョンアップ時はlist-foundation-modelsで最新IDを確認してANTHROPIC_MODELを更新してください。
このセットアップの特徴
| 一般的なセットアップ | このセットアップ | |
|---|---|---|
| リージョン | us-east-1(バージニア) | ap-northeast-1(東京) |
| モデルID形式 | anthropic.claude-* | jp.anthropic.claude-*(cross-region) |
| 電話番号 | 固定電話・携帯 | povo eSIM(物理SIM不要) |
| 支払い | 法人カード・個人クレカ | Wise バーチャルデビットカード |
| アカウント管理 | 1アカウントで運用 | Gmail + アドレスで複数管理 |
東京リージョン(ap-northeast-1)ではモデルIDに jp. プレフィックスが付きます。レイテンシが低く、日本の法規制(個人情報保護法等)に適合しやすいメリットがあります。
メモ
- AWSアカウントは申請ごとに
+aws01,+aws02と連番管理 - アクセスキーは
~/.aws/credentialsに保存されます(gitにコミットしないこと) - Bedrockの料金はトークン従量課金。Claude Haikuが最安
ANTHROPIC_MODELはモデル更新時にlist-foundation-modelsで確認して差し替え